書籍のご紹介「おばって誰? ~アメリカの見知らぬ伯母から遺産相続するまで~」(文芸社)
2020年06月07日弁護士コラム
渉外相続に関する面白い書籍のご紹介です。
『「お前の伯母さんやけどな」――父が亡くなって半年後、叔父からの電話から、すべては始まった。叔父が言うには、アメリカに住んでいる父の姉が亡くなり、親戚たちで遺産を相続しなくてはならないらしい。これまで父に実の姉がいるという話は一度も聞いたことがなかった。――それから、アメリカからの相続を手続きするという、大変なミッションが私に課せられたのである。』(amazonの紹介文より)
まさに法律相談のような出だしであり、普通ならば弁護士に依頼して後は任せたというところですが、この著者の方は違いました。持前の行動力で自ら動き、調べ、その過程で幾多の協力者も得て、とうとう最後まで手続きを終えることができました。すごいな、の一言です。
そして、手続を進める中で徐々に見えてくる故人の思い、故人が繋ぐ人の縁。
実は、私も少しだけ手続に関与させて頂き、客観的な事実関係は多少なりとも知っていました。が、それは本当に一部でしかなかった。相続は単なる財産の受け渡しではなく、縁をつなげていくものなのですよね。相続に関わるということはこういうことだと、私自身も背筋が伸びる思いがしました。
なお、舞台はアメリカのバージニア州ですが、ここでの相続法制では、不動産に限り、法定相続人が希望すれば直ちに財産が移転するのだそうです。日本の法制度では当然のことですが、アメリカでは当然ではありません。通常はプロベートという精算手続が必要であり、時にはそれに何年もの時間を要します。州により法律が異なること自体はよく知られているところですが、本当にこんな基本的なところからして違うのだなぁと、そんなところでも興味深い一冊でした。