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社会福祉・医療現場のためのパワーハラスメント対策(第1回)「パワハラにならない「指導」とパワハラの境界線は?」
2025年07月07日弁護士 白鳥秀明
パワハラ相談は、年々増加しています
パワハラとは?代表的な「6つの類型」
1 身体的な攻撃
2 精神的な攻撃
人格を否定するような発言、他の職員が大勢いる前での厳しい叱責(公開叱責)、必要以上に長時間・繰り返し叱責する行為などです。業務上の注意であったとしても、その伝え方や場所、頻度が不適切であれば、精神的な攻撃と判断される可能性があります。
3 人間関係からの切り離し
特定の職員を意図的に無視したり、会議や業務に必要な連絡事項を伝えない、一人だけ別の部屋に席を移すといった行為が該当します。
4 過大な要求
明らかに遂行不可能な業務目標を課したり、新人看護師に必要な指導を行わないまま、ベテランでなければ対応できないような業務を命じたりする行為です。
5 過小な要求
本人の能力や経験とはかけ離れた、誰にでもできるような簡単な作業ばかりを命じたり、あるいは全く仕事を与えなかったりする行為です。例えば、管理職としての経験が豊富な職員に対し、合理的な理由なく、一日中シュレッダー作業だけをさせるようなケースが考えられます。
6 個の侵害(プライベートへの過度な介入)
交際相手や家族に関すること、性的指向・性自認(SOGI)など、業務とは無関係な私的な情報をしつこく聞いたり、本人の許可なく他の職員に言いふらしたり(アウティング)する行為です。これらの6つはあくまで代表例です。これらに当てはまらなくても、パワハラと判断されるケースはあります。法律上の「パワハラ」と判断される3つの要件上記の6類型のような行為があったとしても、それだけで直ちに法律上のパワハラとなるわけではありません。法律(パワハラ防止法)上の「職場におけるパワーハラスメント」は、以下の3つの要件をすべて満たすものと定義されています。
要件① 「優越的な関係」を背景とした言動であること
もちろん、部長から課長へ、師長から一般の看護師へ、といった関係は分かりやすい例です。しかし、同僚や部下であっても、以下のような場合は「優越的な関係」に立ち得ます。
・その職員の協力がなければ、業務が円滑に進められない場合
・専門知識や経験が豊富で、その職員に逆らいにくい関係がある場合
・集団で一人の上司の指示を無視し、業務を妨害する場合(部下から上司へのパワハラ)
要件② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること
業務上のミスや改善すべき点について、必要な指示や指導を行うこと自体は、もちろんパワハラではありません。
要件③ 労働者の就業環境が害されること
まとめ:今回のポイント
・パワハラには代表的な6つの行為類型があること。
・法律上のパワハラは、「①優越的な関係」「②業務の適正な範囲を超える」「③就業環境を害する」という3つの要件で判断されること。